研究概要 |
加齢性尿濃縮能低下の一因である集合尿細管のバゾプレシン(AVP)感性の低下における集合管V1受容性の役割を、単離した兎の皮質部集合尿細管を用いて検討した。加齢群の選択にあたって、老年の個体では腎萎縮やGFR低下が尿濃縮能障害に関与し病態が複雑になる。よって今回は尿濃縮能低下が組織変化、GFR低下に先だって見られる中年相当の動物を用いた。結果:まずフォスフォジエステラーゼ阻害剤(isobutyl-methyl-xantine)存在下でのAVP感受性cAMP産生能の差をみたところ、100pM,10nM,1muMAVP投与によるcAMP産生量は若年(生後2か月)、加齢(生後2年)群で有意差がなかった。またadenylatecylase活性にも年齢差がなかった。よってV2受容体からadenylatecylaseまでのシグナル伝達は保たれいるものと思われた。一方5倍量のV1受容体拮抗薬d(CH2)5Tyr(Me)AVP同時存在下では、100nMAVPによるcAMP産生は若年群では変化しないのに比し加齢群では有意に増強した。10nMAVPに対するV1受容体拮抗薬の反応も同様の年齢差がみられたが有意ではなかった。またcAMP-phospodiesterase活性は加齢群で有意に亢進していた。結論:従来の老齢動物での研究では、V2受容体からadenylatecylaseまでのシグナル伝達の障害が集合尿細管のAVP反応性低下の機序として挙げられていたが、今回の中年相当の加齢群ではそれを裏付ける結果は得られず、新たにV1受容体機能亢進によるV2受容体依存性cAMP産生抑制が尿濃縮能低下を来す可能性が示唆された。ただしV1受容体拮抗薬に対する両群の反応差は僅少であり、これが加齢性尿濃縮能低下にどの程度関与しているかは、今回認められたphospodiesterase活性亢進との関連を含めさらに検討を加えたうえで評価する必要があると思われる。
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