研究概要 |
プロスタグランジンE1は新生児の動脈管を開存させる目的で臨床で用いられているが、その詳しい作用機序はわかっていなかった.今回、プロスタグランジンE1の動脈管拡張作用の機序について,とくに細胞内CA濃度との関連について明らかにした.実験は妊娠30日の(妊娠満期は31日)家兎胎仔の胸腔より動脈管を摘出して行った.動脈管を輪切りにし顕微鏡上の張力測定組織バス(底にカバーグラスが張ってある)の上に置き,張力を測定した.細胞内Ca濃度の測定にはCa感受性蛍光色素であるFura-2を細胞内にとりこませた後紫外線(340nmと380nm)をあて,その蛍光を測定し、比を計算することで行った. 無酸素状態から高酸素状態にし動脈管を収縮させると細胞内Ca濃度は上昇した.その後プロスタグランジンE1を投与すると動脈管は弛緩したが,その弛緩に伴って細胞内Ca濃度も低下した.酸素で収縮した動脈管にたいしイソブロテレノール(beta受容体を刺激しcyclicAMPを上昇させる)を投与すると動脈管は弛緩したが、細胞内Ca濃度も低下した.細胞膜脱分極をおこす高K液を投与すると、動脈管は収縮したが、細胞内Ca濃度も上昇した. 以上の結果は、動脈管の収縮弛緩は細胞内Ca濃度で制御されていること、プロスタグランジンE1の動脈管に対する弛緩作用は細胞内Caを減少させることによるものであること、を示唆する.プロスタグランジンE1は細胞内cyclicAMPを上昇させ、細胞内器官によるCaの取り込みを亢進させる結果、細胞内Ca濃度が低下するのかも知れない.
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