研究概要 |
多臓器不全(Multiple organ failure;MOF)の成因、憎悪因子として各種humoral mediatorが関与すると推測されている。この際の持続血液漉過(Continuous hemofiltration;CHF)は、これらhumoral mediatorの除去による病態改善の可能性と、一方では、漉過膜表面での補体の活性化に基ずくhumoral mediator生成による病態悪化の可能性も併せもつ。そこでMOF患者6例にCHF施行の際の血液、漉過液の各種humoral mediatorを経時的に測定して、それらと病体の関連を検討し、以下の成績を得た。 1.CHF開始時及び24時間後の漉過膜前後の血液と漉過液のinterleukin(IL)-1alpha,betaおよびtumor necrosis factor(TNF)-alphaを測定したが、1例のCHF開始時の漉過膜後の血液のTNF-alphaが6pg/mlであったが他は何れも測定感度以下(<5pg/ml)であった。 2.6-keto-prostaglandin(PG)F_<1alpha>,thromboxane(TX)B_2,11-dehydro-TXB_2の漉過率は各々28-100%,17-100%,12-100%と個体間及び採取時期での差が大で、またCHF開始時と24時間後の値に差を認めなかった。 3.TXB_2から11-dehydro-TXB_2への変換率は38-95%であり、平均69%であった。 4.6-keto-PGF_<1alpha>,TXB_2,11-dehydro-TXB_2のCHF24時間後の値は前に比して何れも増減半ばし、一定の傾向は得られなかった。 5.TXB_2+11-dehydro-TXB_2/6-keto-PGF_1はCHF開始時11.8であったが24時間後は半数が増加、半数が減少し一定の傾向は得られなかった。 以上の事から、IL-1,TNFは現時点での測定系での評価は不可能で、また6-keto-PGF_<1alpha>,TXB_2については測定可能なものの、CHFによる影響は一定の傾向が得られず、明確な結論は得られなかった。但し、TXB_2から11-dehydro-TXB_2への変換率は平均69%である事からTXB_2の評価には11-dehydro-TXB_2も併せて評価すべきで有ることが確認された。
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