研究概要 |
乳癌でc-erb B-2の発現している症例では再発率が高く、予後が悪い。従ってこのような症例に対してはより効果的な集学的治療が望まれる。今回われわれは、まず、c-erb B-2産物の細胞外成分を認識するマウスモノクロナール抗体A-0011とADRとのimmunoconjugateを作製し、その選択的殺細胞効果を明らかにした。まず、抗体にSPDPを作用させ-SH基を導入し、ADRには2-iminothiolaneを作用させ-SH基を導入し、S-S結合で架橋した。ヒト乳癌細胞株はATCCより得られたc-erb B-2発現量の異なる4つの細胞株SKBR-3,MCF7 BT-20,MDA-MB361を用いた。それぞれのc-erb B-2発現量は、A-0011の各細胞株に対する結合能をElisaにて調べることより定量した。c-erb B-2の発現量はSKBR-3で高発現、MDA-MB361で中発現、MCF7及びBT-20で低発現をみた。A-0011-ADR conjugateは濃度依存症性に、かつ、c-erb B-2発現量依存性に殺細胞効果を示した。また、その効果はADR単独投与よりもはるかに低濃度で現れた。 次に、実際に臨床応用をめざし、ヒト型モノクロナール抗体とADRとのimmunoconjugateを作製するため、ATCC購入したヒト乳癌患者のリンパ球より得られたhybridoma JDB1及びRi 37を培養し、その培養上清中にヒト型モノクロナール抗体の存在を調べた。JDB1ではIgM、Ri 37ではIgGのサブクラスのヒト型モノクロナール抗体が産生されていた。しかし、これらのhybridomaをSCIDマウスの腹腔内に投与するも腹水形成はみられなかった。さらに、これらの抗体の癌細胞に対する結合能は低く、実用的な抗体とは思われなかった。
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