【目的】教室では食道癌切除後の再建に原則として半切胃菅を用いる。再建胃管の運動能は悪く術後のQOLを増悪させる。そこで電気刺激が再建臓器の運動機能を改善するか否か、さらに抗アセチルコリンエステラーゼ活性の作用により消化菅運動促進作用を有するRanitidineが電気刺激に対して相加効果を示すか否かを検討した。【材料及び方法】15〜20kgの雑種成犬6頭を用い、経腹的に全幹迷切および幽門形成術を施行し全胃管モデルを作製した。術後3ヵ月以上経過した慢性犬を再度開腹し胃体部から十二指腸球部に4個のstrain gage transducerを輪状筋の収縮運動が記録できるように縫着し、その口側大弯で周波数0.5〜10Hz持続時間0.5msec定電流15mAのパルス波頻回刺激を3分間負荷して応答をみた。1〜5mg/kgのRanitidineを経静脈的に投与し15分後に同様の刺激を負荷し運動の比較検討をした。これらの刺激実験は、pentobarbital sodiumの静脈内投与による浅麻酔下で施行した。収縮運動の評価は次の項目で行った。1.収縮回数(cycle/min)、2.伝幡速度(cm/sec)3.収縮波高(dyn)4.収縮力(dyn/sec)【結果】胃底部大弯側に発生する単調なサインカーブ様の自動運動は収縮回数3.2cycle/min伝幡速度0.9cm/sec収縮波高0.3dynであった。電気刺激を加えることにより収縮回数および伝幡速度の変化は認められなかったが、収縮波高と収縮力は刺激周波数が0.5〜10Hzと大きくなるにつれて著しく増幅された。収縮波は順行性の伝幡性を認められた。この電気刺激による収縮力の増大はHexamethonium(20mg/kg)及びAtropine(0.05mg/kg)の投与により抑制された。Ranitidine1〜5mg/kgを投与した後5Hz0.5msec15mAの電気刺激を負荷すると、収縮回数、伝幡速度に変化は認められなかったが、収縮波高と収縮力は用量依存性に増幅された。【まとめ】1.両側迷走神経切離後の全胃管モデルにおいて、大弯側前壁の電気刺激により幽門輪方向への順行性収縮運動の増強を誘発できた。2.電気刺激による収縮力の増大はHexamathonium及びAtropineで抑制されることから、胃壁内の腸間神経を介するものと考えられた。3.Ranitidine投与は電気刺激による収縮回数及び伝幡速度に影響を与えなかったが、収縮波高および収縮力を用量依存性に増大させた。4.食道切除後の再建胃管においても、電気刺激とRanitidineにより運動機能の改善される可能性が示唆された。
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