肝虚血再灌流時には、フリーラジカルが組織障害の原因となることがいままでに報告されている。一方、多核白血球は、その組織障害において大きな役割を果していると思われ、そこには、さまざまなmediatorが関与している。われわれは、このフリーラジカル産生においては、炎症性サイトカインによるmodulationが重要であると考えているが、その関連について検討したものは今までにはなく、そこで、以下の様な検討をおこなった。 まず、ラット大動脈より採取した血液を用いて、in vitroにおいて、好中球よりのフリーラジカル産生と炎症性サイトカインのひとつであるIL-1の関連について検討した。具体的には、LPS primingによるフリーラジカル産生を化学発光により測定、IL-1受容体拮抗物質(IL-1ra)の非添加群と添加群で比較した。 次に、in vivoの実験として、ラット同所性肝移植モデルに準じた全肝阻血モデルにおいて、阻血再潅流後の肝におけるフリーラジカルの関与を化学発光を用いて検討し、さらに、IL-1raを投与して、そのフリーラジカル産生とIL-1の関連について検討した。 以上の実験的検討の結果、得られた知見は以下の通りである。 1.肝虚血再灌流後の肝より流出した好中球よりのフリーラジカル産生増加が認められた。 2.その好中球よりのフリーラジカル産生は、内因性のIL-1によりup-regulateされていることが示唆された。 3.そのフリーラジカル産生増加と並行して、肝組織障害の増悪が認められ、フリーラジカルがその組織障害の原因となっていて、IL-1raにより内因性のIL-1をブロックすることで、その組織障害を軽減することができた。 以上のことは、第41回日本消化器外科学会総会Workshop、第93回日本外科学会総会、第79回日本消化器病学会総会、第29回日本移植学会総会、The 4th International Workshop on Cytokines等において発表した。 今後、肝組織中のSOD測定、CoQ10アニオンラジカルの測定等より、肝虚血再灌流における肝実質細胞由来のフリーラジカルの関与について、また、局所血中のcytokine levelの測定、また、IL-1raのかわりにTNFbinding protein(TNF soluble receptor)を用いることからcytokineの関与について、更なる検討をすすめていくつもりである。
|