研究概要 |
心臓手術中にルーチンモニターとして用いている経食道心エコー法(TEE)により,特に開心術における体外循環離脱時に心内遺残空気が多くの症例で認められ,貯留型のものではその量が決して無視しえない量であることが,以前の検討で明きらかとなったが,今回は,特に左室心尖部の空気に焦点をあてて空気を定量する試みを行った. シリコンラバーを用いて左室心尖部モデルを作製し(幾何学的モデルおよびイヌ左室鋳型モデル),これに注入した既知量の空気(0.1〜5.0m1)の定量をエコー法を用いて行った.どちらのモデルにおいても,空気は術中に経食道心エコー法を用いて観察されたと同様に,高輝度陰影として描出された.その幅と厚さをエコー画面上で測定し,これらの値を半類楕円体,円錐,円柱,弾丸型,球形の5種類の近似モデルに代入して容量を算出し,注入量との相関,一致率を検討した.その結果,いずれのモデルにおいても算出量と注入量との間にR=0.96以上の高い相関を得,エコー法により描出される空気の大きさは空気の量に非常に相関していることが示された.さらに臨床上問題となる可能性のあると考えられる0.5m1をcritical volumeと考えてこれ以上とこれ以下の量を分別することが可能かを各左室モデル,各近似モデルについて検討し,とくに球形モデルが有用であることが示された. これに続いて左室,右上肺静脈内に貯留した空気の効率的な除去法について検討するために,同様にシリコンラバーを用いてイヌの心臓・肺から肺静脈-左房-左室モデルを作製し,有効な空気除去法についてのモデルを作製し,検討しつつあるところである.今後は,これらのモデルで得られた情報を臨床の場に応用し,さらに安全な術中管理に役立てたいと考えている.
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