1)目的:心内膜からのLaser照射による心房筋全層凝固の至適照射条件、安全性と心房細動に対する有効性を調べることを目的とした。 2)方法:(1)雑種成犬を用い、対外循環心停止に右房切開、心房中隔切開後、Nd:YAG Laserを用いて右心房、左心房内膜面から1cmの距離をおき、垂直に各々5、10、15、20、30ワットの条件で、1cm/secの速度でなぞるように線状に5cm程度の非接触照射を行う。照射効果のむらをなくすよう照射面は血液を除いておく。 (2)心房切開線を閉じ、対外循環から離脱させ、心房表面の出血や血腫の有無を確認する。また対外循環離脱後の心房性不整脈の出現を調べる。離脱1時間後にプログラム刺激などで催不整脈を調べる。その後組織を採取しホルマリン固定後光顕的に組織像を調べ、照射条件と凝固組織形成範囲を調べ、全層性に凝固が及んでいるかどうかの有用性の評価を行う。 (3)また慢性犬を作成し心電図、電気生理学的検査によりLaser凝固組織自体の不整脈源性について調べ、慢性期の組織像を評価する。 3)結果:心内膜からのNd:YAG Laser照射による心房筋全層凝固の至適照射条件は、20〜30ワット、1cm/scc(非接触照射)で、ほぼ全層性の凝固組織が得られた。また照射による穿孔などは認められなかった。また対外循環離脱後急性期においては不整脈は認められなかった。また慢性期においても重篤な不整脈は誘発されず、組織像においても照射部位は繊維化し境界明瞭であり、不整脈源性は少ないと考えられた。 4)まとめ:以上よりNd:YAG Laserによる心房筋照射は、心房細動に対する外科的切開、縫合にかわりうる手段となりうることが示唆された。
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