本研究では静脈路切離の安全性(危険性)を一時的な静脈遮断における静脈圧の変化および静脈内容量負荷による静脈圧の変化(側副血行の予備能に相関すると考えられる)という点から検討した。また、同時に局所脳血流量を無侵襲なモニターである温熱式プローブで測定し静脈圧との関係を検討した。まず、ネコを用いて、全麻下に開頭を行ない上矢状静脈洞と架橋静脈を露出後、段階的に側副血行路の閉塞を行い、静脈圧の上昇の有無、程度および容量負荷後の静脈圧の上昇および下降曲線等を測定ご閉頭した。静脈圧および負荷静脈圧に変化のないものは脳血流にも有意な変化はみられず、組織学的にも異常は認めなかった。逆に、静脈圧の上昇が明きらかであったものは術後早期に脳ヘルニアを起こし死亡した。この境界領域を負荷静脈圧で検討したが、予想外に境界範囲が狭いようである。現在、静脈圧負荷の方法に工夫を加えて検討中である。 本研究と平行して、臨床例14例において開頭術後脳表に脳血流モニターを設置し、架橋静脈および静脈洞の一時遮断による脳血流の変化を調査した。一時遮断により血流低下がみられなかった12例中7例では、静脈を切離し、のこる7例では静脈を温存して手術を終えた。現在までのところ、術後の脳損傷を合併したものはない。まだ、症例が少なく断定的なことはいえないが、一時遮断による静脈圧と脳血流の変化をみることで、静脈切離の安全性に関する評価が、ある程度可能と考えられた。
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