1.目的 日整会誌64巻6号において^<32>P誘発ラット実験骨肉腫細胞株の樹立および同細胞株のヌードマウス皮下移植により自然肺転移を生ずることを報告した。今回はその細胞株をWistar系ラットに移植し、その移植性、病理像および肺転移につき検討した。 2.方法 ^<32>Pを2週に1回、体重あたり1muCi/gで生後3週齢のWistar系ラットに計10回腹腔内投与し発生した脛骨発生骨肉腫の初代培養を移植片法のより行い、10%子牛血清添加Dulbecco変法MEM培地にて継代培養し樹立した細胞株YROS-1を用いた。1×10^7個の株細胞を第1群は生後8週齢のWistar系ラット10匹、第2群は生後11週齢のWistar系ラット6匹の大腿部皮下に移植し、その造腫瘍性を調べた。腫癌が増大した時点で屠殺し、軟X線撮影を行い、皮下腫癌と肺の組織学的検索をH.E.染色標本により行った。 3.結果 第1群は10匹中5匹、第2群は6匹中3匹に移植後4週で腫癌形成が認められた。移植後9週で腫癌は径60-80mm大に増大し全身状態不良となったため屠殺した。軟X線像では大腿骨・脛骨を取り囲むように腫瘍が発育していたが、骨の破壊はみられなかった。発生腫瘍は病理組織学的に紡錐形細胞肉腫の像を呈しており、類骨形成はみられなかった。肺の転移巣は認められなかった。 4.考察 YROS-1は免疫学的寛容状態をすぎた生後8-11週齢の同種ラットにも移植可能であることが判明し、骨肉腫の基礎研究に有用と思われる。しかし、類骨形成能や肺転移能が失われており、これは継代培養中に培養細胞の性格が変化したためと考えられる。今後、培養細胞を静脈投与し肺に生着したものを再培養する方法などを試し、さらに理想的な骨肉腫実験モデルの確立をめざしたいと考える。
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