[目的]同種保存骨移植において電気刺激が骨癒合促進に有効であるか否かをみるため、家兎の骨膜を介し移植骨を刺激する実験モデルを作製し検討した。[方法]日本白色家兎をdonorとし、その脛骨骨皮質を10mm×3mm大のブロックとして採取し、-80度Cで3週間凍結保存したものを移植骨として使用した。tecipientにはニュージーランド白色家兎を用いた。recipientの脛骨内側の骨膜を剥離して開き、その骨膜下に移植骨をonlay graftした後、骨膜で移植骨を被覆した。この移植骨直上の骨膜に陰極のphi0.3mmステンレス鋼線を固定して、10muAの直流電気刺激を行なった。陽極はphi0.5mm白金線を使用し、陽極と刺激装置本体は大腿内側の皮下に留置した。家兎の一側の下肢を刺激側とし、対側を通電しないコントロール側とした。電気刺激開始後、2、3、4、6週で検体を採取したが、検体採取前に蛍光ラベルによる骨標識を行なった。各週5羽ずつとし、単純X線撮影後、脱灰および非脱灰組織標本を作製して比較検討した。[結果]2週では、移植骨周囲の外骨膜の反応が電気刺激側で著明にみられ、類骨形成や幼弱軟骨細胞が盛んに出現しているのが認められた。4週では、全例に移植骨は骨癒合し、移植床の骨改変も進行して移植床に多数の骨標識をみとめるようになった。また、移植骨周囲の類骨は石灰化し、仮骨を形成していた。これらの変化はいずれも電気刺激側で著明であった。6週では、移植骨は、移植床のみならず周囲仮骨とも交通するようになり、移植骨内にも骨標識を認めるようになったが、この現象も電気刺激側で優位に認められた。以上の如く、移植骨周囲の仮骨形成や、移植床および移植骨自体の骨改変は、電気刺激側で優位であり、骨膜を介した場合の直流電気刺激は、移植骨の再造形を促進させる効果があることが判明した。
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