全ての麻酔薬は血液中に一定の濃度で溶解しこれが中枢神経系に到達することでその作用を発揮する。その過程において麻酔薬と直接接触する血液成分に与える影響についての報告はほとんどない。血小板は凝集物質により活性化されるとdense tubular systemより細胞質内へカルシウムイオンが遊離されこれが収縮蛋白に働き、形態変化、凝集反応となって現れると考えられている。また好中球を細菌由来のフォルミル化ペプチドにより刺激すると小包体より細胞質内へカルシウムイオンが遊離されることよりその貧食能の発現にカルシウムイオンが大きく関わっていると考えられている。従ってカルシウムイオンを指標とすることにより従来の方法に比べはるかに正確に血小板凝集能及び好中球貧食能を測定することができる。そこで著者が既に確立したシナプトゾームのカルシウムイオン濃度の変化を測定するシステムを用い、麻酔薬がこれらの血液成分の機能に与える影響を調べ、麻酔薬の作用機序の解明の一助にしたいと考え本研究を行なったものである。 まず、血小板内カルシウムイオン濃度の測定では、安静時及び凝集時の濃度変化は安定して測定できる系が出来上り、現在、各種麻酔薬、各種血管拡張薬お影響を測定しつつあり、データもいくつか得られておりまもなく報告できると考えている。 また好中球内カルシウムイオン濃度の測定では、刺激剤としてのフォルミル化ペプチドの種類を変え、貧食能を惹起する適正濃度を求めているところで未だカルシウムイオン濃度を求めるに至ってはいないが、早急に実験系が確立するよう努力する所存である。
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