研究概要 |
揮発性麻酔薬ハロセンは、摘出腸間膜動脈において筋小胞体(SR)からのCa^<2+>誘発Ca^<2+>遊離機構を促進して収縮を起こす。血管平滑筋(VSM)のSRに対し類似の薬理作用を有するカフェイン(CAF)は、摘出血管においてCa^<2+>遊離による一過性の収縮とそれに続く弛緩の2相性の作用を有している。ハロセンの血管作用の臓器特異性の機序を解明するため、それに先立ちCAFの2相性の血管作用のうち弛緩作用の機序の解明を行う必要がある。本年度は、CAFの血管弛緩作用の機序について検討した。 1.摘出ラット大動脈のリング状標本をリンゲル液中で3gの静止張力下に懸垂し、その等尺性張力変化を記録した。フェニレフリン(3×10^<-7>M)で前収縮させ、CAF(10^<-4>〜10^<-3>M)累積投与による弛緩反応を種々の拮抗薬の前処置下に記録した。拮抗薬として、インドメサシン(IM,10^<-5>M)、ニトローL-アルギニン(L-NA,10^<-5>M)、オキシヘモグロビン(oxyHB,10^<-5>M)およびメチレンブルー(MB,10^<-5>M)を用いた。 2.血管平滑筋のcGMPおよびcAMPの変化をラジオイムノアッセイ法で測定した。 3.CAFにより再現性のある濃度依存性の弛緩が得られた。IMは弛緩に影響しなかったが、L-NA、oxyHBおよびMBの前処置により弛緩は有意に抑制された。内皮除去によって同程度の抑制が見られた。CAF投与5分後、cGMPおよびcAMPは有意に増加した。 以上の結果より、CAFによる弛緩は、内皮依存性および非依存性の2つの機序から成ることが示された。内皮では、CAFは内皮依存性弛緩因子(EDRF/NO)産生を促進し、VSM中cGMPを増加させ、VSMに対しては、フォスフォジエステラーゼ阻害薬として作用し、cAMP量を増加させ、それぞれ弛緩作用を発現することが示された。
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