1、ショックモデルの作成 雑種成犬を用いて、急速脱血による不可逆性ショックモデルの作成を試みた。平均動脈圧30〜35mmHgに達する急速脱血の後、この脱血性低血圧を2時間維持し、血液に乳酸加リンゲル液を加えて(各々最大脱血量の1/2量)を急速還血するという条件を設定した。この条件にて予備実験6例の結果、急速脱血は平均約37ml・kg^<-1>、約12分で所定の動脈圧に達し、その後約55分後に最大脱血量(約300ml・kg^<-1>)に達し、2時間後における自然還血量は最大脱血量の約22%であった。近藤ら(日本救急医学会会誌、3(3):23-34、1976)によると、不可逆性ショックモデルの作成には平均血圧30mmHgで最大脱血量の40%の自然還血を待つことと報告されていることから、今回の条件では不可逆性ショックに至っていないと思われたが、そのまま実験を継続することとした。 2、アデノシン投与 まず非ショック成犬において、アデノシンおよびアデノシン作用の増強効果で知られるジピリダモ-ルが循環動態に及ぼす影響を、それぞれ投与量を変えて検討した。その結果、アデノシン0.125mg・kg^<-1>・min^<-1>の単独投与により投与前と比較して心拍数が約64%、平均動脈圧が53%、末梢血管抵抗が約49%に減少し、中心静脈圧が約235%、1回心拍出量が約164%に増加した。そこでショックモデルの還血時に0.2%アデノシンを0.1ml・kg^<-1>・min^<-1>で投与することとした。現在まで非ショック群6例、ショック群3例を行ったが、循環動態に統計学的有意差は得られていない。心蘇生を目的とする実験のためにはショックモデルの再検討が必要と思われた。
|