研究概要 |
フマジリン誘導体であるAGM1470は、本邦で合成された血管新生阻害剤で、正常血管内皮細胞の増殖を阻害することが知られている。我々は本剤のヒト泌尿器癌に対するin vivoでの腫瘍増殖抑制効果をヌードマウスを用い検討した。さらに本剤の移植腫瘍に対する効果を病理組織学的にも検討した。6週齢のBalb/c雄性ヌードマウスの背部皮下に、ホルモン非依存性前立腺癌培養細胞株(PC-3,DU-145)5x10^6個および、当教室で樹立し、ヌードマウス継代中の膀胱癌株(BL-4)、腎癌株(Re-9)を移植した。移植後3日目以降AGM1470投与群では、25mg/kgを隔日皮下に注射した。コントロール群では同様に生食を皮下に投与した。3ないし4日毎にマウスの体重、腫瘍の長径及び短径を測定、腫瘍推定重量をL×W^2×0.5として算出、相対腫瘍重量の比(T/C)を経時的に求め、実験終了時にT/Cが42%以下の場合、本剤による抗腫瘍効果と判定した。さらに、摘出腫瘍の組織切片をヘマトキシリン-エオジンにて染色し、観察した。腫瘍細胞移植後30日前後のホルモン非依存性前立腺癌細胞株、PC-3、DU-145のT/Cは、それぞれ29%、41%でこれらの腫瘍に対する本剤の抗腫瘍効果が認められた。同様にヌードマウス継代膀胱癌株BL-4、同腎癌株Re-9の腫瘍片移植後30日前後のT/Cは47%、39%で、腎癌株で本剤による腫瘍増殖抑制効果を認めた。PC-3移植腫瘍に対するAGM1470の効果を組織学的に検討した結果、核のpykinosis、intracytoplasmic vacuolaeを認めた。副作用では、AGM1470投与群で腫瘍移植後30日前後において生食を投与したコントロール群に比べ、13%程度のマウスの体重減少を認めたが、出血傾向等の副作用は認めなかった。本研究課題により、腫瘍血管の形態学的、生物学的特性、血管新生阻害剤によるヒト泌尿生殖器癌に対する有効性が確認され、これらの腫瘍における新しい治療法の可能性が示唆された。
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