1.フリーホモシスチン・フリーホモシステイン濃度の測定:凍結保存血漿5検体についてニンヒドリン法によるアミノ酸分析を行ったが、ホモシスチン・ホモシステインは検出されなかった。4℃で遠心濃縮を行い検出を試みたが、10倍濃縮してもやはり検出されなかった。プール血漿に50nmol/mlのホモシステインを加えてアルブミンとの結合率を調べたところ、30分で23.8%となった。そこで新たな3例において採血後直ちに血漿を分離し、迅速に除蛋白した検体でアミノ酸分析を行ったがホモシスチン・ホモシステインは検出させなかった。一方、同様の処理を行った臍帯静脈血2検体の検討では、1.07および0.92nmol/mlのフリーホモシスチンが検出された。 2.総ホモシステイン濃度の測定:アルブミンに結合したホモシステインはメルカプトエタノールで還元すると、遊離ホモシステインとして検出できる。臨床症例に対する検討は当面総ホモシステイン濃度によって行うこととした。48妊婦の血漿中総ホモシステイン濃度は5.6±2.3nmol/mlであったため、正常上限を10.2nmol/mlとした。常位胎盤早期剥離および子宮内胎児死亡群7症例中には異常高値はなく、平均は4.7±2.7nmol/mlであった。妊娠中毒症19例中2例で異常高値を認め、それぞれ12.9および37.8nmol/mlであった。この2例は双胎であった。単胎の妊娠中毒症患者では、胎児発育不全をともなう患者7例の平均は5.5±2.0nmol/mlであり、胎児発育が正常であった9例では、6.9±1.7nmol/mlであった。 3.血中ホモシステインの役割:ホモシステインの異常高値を示すホモシスチン尿症保因者では、血管内皮細胞障害を介して胎児死亡や常位胎盤早期剥離の原因となる可能性があるが、生理的濃度では逆に胎児発育に何らかの促進的役割を担っている可能性がある。
|