1.ヒトパルボウイルスB19(以下B19と略)血症患者より得られた天然のB19抗原を用いたELISA法(以下native ELISAと略)、遺伝子工学的に作製された合成のB19抗原を用いたELISA法(以下recombinant ELISAと略)、並びに合成抗原を用いたWestern blot法(以下recombinant Western blotと略)、以上三種の抗B19抗体検査法を比較検討した。抗B19IgG抗体検査において、recombinant Western blotは、native ELISAと比較すると、敏感度86%、特異度100%であった。しかし、recombinant ELISAは、敏感度86%であったが、特異度は78%にすぎなかった。抗B19IgM抗体検査において、recombinant Western blotは、native ELISAと比較すると、敏感度100%、特異度91%であった。しかし、recombinant ELISAは、敏感度も50%、特異度も77%にすぎなかった。したがって、既に商業ベース化されているrecombinant Western blotは、B19感染の血清学的診断に適切であると考えられた。一方、同様に既に商業ベース化されているrecombinant ELISAではあるが、改良の余地があると考えられた。 nested PCR法によるB19感染診断法を開発した。まず本法の感度を検討したところ、理論的には1ゲノムコピーの検出が可能であった。次いで、肝臓及び胎盤を用いたin situ hybridisation法(以下ISHと略)にてB19胎内感染が証明されている胎児水腫例の種々の臓器や体液を検体として本法を行った。肝臓及び胎盤からB19が検出されたのはもちろんのこと、腹水、血球及び血清からもB19が検出された。一方、ISHにてB19胎内感染が否定された胎児水腫例の腹水、胸水、血清及び羊水を検体として本法を行ったが、いずれからもB19は検出されなかった。したがって本法による、羊水を用いたB19胎内感染の早期診断が期待される。
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