研究概要 |
In vitroにおける家兎卵巣灌流装置を用いて、排卵過程に及ぼす卵巣内局所性renin-angiotensin系(RAS)の作用について検討を加えた。 1.angiotensinII(AII)の直接作用:2時間毎に投与されたAIIはgonadotropin(hCG)非存在下でin vitroでの排惹起し、AIIの受容体拮抗剤であるsaralasin(S)の同時投与でAIIによる排卵は完全に抑制された。AIIはhCG非存在下で卵胞卵及び排卵卵子の卵核成熟を促進した。またAIIは卵巣内estradiol(E_2)産生を有意に刺激したが、progesterone(P)産生には影響を与えなかった。さらにAIIによる卵巣内PGF_<2alpha>、PGE_2生合成を有意に促進し、indomethacinの同時投与でPG生合成を抑制すると、AIIによる卵胞発育及び排卵が完全に抑制された。 2.hCG投与によって惹起されるin vitroでの排卵過程に及ぼすSの作用:hCGによって惹起される排卵は、S投与により用量反応性に抑制された。さらにSの同時投与は、hCGによって刺激されるE_2、PGF_<2alpha>、PGE_2分泌を有意に抑制した。しかし、排卵過程で分泌されるP産生に影響を与えなかった。 3.卵巣内AII受容体の存在:卵巣膜分画を抽出し、^<125>I-〔Sar^1,Ile^8〕-AIIを用いたradioreceptor assayにより、家兎卵巣内には高親和性(Kd=0.5×10^<-9>M)のAII受容体の存在することが明らかとなった。 以上より、卵巣内RASはgonadotropin surge後の排卵過程で活性化され、その生理活性の中心であるAIIはparacrine,autocrine機構を介して卵成熟、卵胞破裂機構に促進的に作用することが示された。
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