研究概要 |
妊娠S/Dラットの子宮血流を一過性に遮断しIUGRモデルを作成するとともに,その発症機序におけるoxidative stressの関与について検討した。S/Dラットを妊娠17日目にハロセン麻酔下に開腹し、血管クリップを用いて子宮血流を30分間遮断した後、開放、閉腹した。その後妊娠21日目に帝王切開術にて胎仔を娩出し、その体重を計測し、血流遮断側(右子宮角)と非遮断側(左子宮角)の間で比較検討した。また薬剤投与の効果を検討するため、血流遮断前にSOD20000単位/kg、あるいはcatalase90000単位/kgを皮下投与した。なおコントロールは生理的食塩水投与群とした。さらに胎盤におけるoxidative stressを評価するため遮断側胎盤をhomogenizeし過酸化脂質(TBA反応物質)の定量を行い、各群間において比較検討した。その結果、非遮断側の子宮角の胎仔体重の平均を100とすると、遮断側の胎仔体重はコントロール群(生理食塩水投与)で89.2±2.4、SOD投与群で96.9±1.9、Catalase投与群で95.4±3.5となりコントロール群のみで非遮断側、遮断側間に有意の体重減少を認め、SOD投与群、Catalase投与群においては胎仔IUGRの発症は抑制された。また遮断側胎盤中過酸化脂質量に関しては、コントロール群136.1±7.0nmol/gw.wt.に比較して、SOD投与群では123.2±9.2nmol/gw.wt.、またCatalase投与群で107.1±5.0nmol/gw.wt.と両群ともコントロール群に比較して有意に低値であった。 今回の実験で、妊娠17日目のラット子宮胎盤循環を短時間遮断するだけでも低体重胎仔が作製された。また、このIUGRモデルに対し血流遮断前にSODあるいはCatalaseを投与するとIUGRの発症が抑制され、同時にoxidative stressの指標と考えられる胎盤過酸化脂質の増加も抑制された。これは、本モデルにおけるIUGRの発症機序においてsuperoxide、hydrogen peroxideといった活性酸素種の関与を示唆するものといえる。
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