視運動性眼振(Optokinetic nystagmus;OKN)に関わる視覚情報の第一次中継核である視索核(Nucleus of theoptic tract;NOT)から下部脳幹への投射経路が存在することが、我々の以前の組織学的実験で確かめられている。今回はこのうちNOTから前庭神経核への投射経路を電気生理学的に調べた。 実験にはネコを用いた。充分な麻酔を行い、脳幹部を手術的に明視下においた。まず末梢前庭の電気刺激に対する反応をみることで、前庭神経核ニューロンを同定することができた。次にやはり明視下においたNOTにガラスコーテイングした金属電極を刺入し、ここから電気刺激を行って、この刺激に対してさきに同定した前庭神経核ニューロンが応ずるかどうかを調べた。しかし、末梢前庭刺激およびNOT刺激の両者に応ずる前庭神経核ニューロンはいまだ認められていない。その原因としては、組織学的にNOTから前庭神経核への投射は他の神経核への投射に比べ少ないことがわかっているが、そのため応ずるニューロンを見つけることが難しいと推測している。現在なお研究継続中である。 並行して行っている組織学的実験では、NOTから投射を受ける部位のうち、橋被蓋網様体核(Nucleus reticularis tegmenti pontis;NRTP)からの次の標的部位を研究している。現時点では、NRTPからの投射部位の一つに視床の腹側部がある(この結果は第52回平衡神経科学会で発表した)。ここはForelのH野と呼ばれる部位で、従来垂直眼球運動に関わると言われている。ここと水平眼球運動に関わるNRTPとが関係することは興味があり、現在電気生理学的に調べているところである。
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