1.目的: 本研究では、糖尿病が自然発症する糖尿病チャイニーズハムスター(CHAD)を対象として、糖尿病発症の前後とその経過を通して網脈絡膜の血流動態ならびに網膜症の有無を経時的に観察する。 2.方法と結果: (1)網膜所見の検討:検眼鏡を用いて網膜の経時的変化を観察した。また、左頚静脈よりFluorescein-Na(7mg/体重kg)の蛍光色素を注入し、経時的に小動物用眼底カメラで蛍光眼底検査と撮影を行なった。その結果、糖尿病発症後12ヶ月経過しても、検眼鏡ならび蛍光眼底検査において糖尿病網膜症を認めなかった。 (2)放射性マイクロスフィア法:Srで標識したマイクロスフィア(直径±1.5mu)を頚動脈から0.5ml注入し、深麻酔下で眼球を摘出した。摘出眼から網膜を分離して、gammaカウンターにより、放射線量の測定を試みた。しかしながら、強膜から分離できた膜脈絡膜から、完全な網膜のみに分離するができず、網膜と脈絡膜を測定する結果となった。次に、摘出した網脈絡膜試料の乾燥重量を測定し、乾燥重量当りの網膜血流量の計測を試みた。分離網脈絡膜の重量が小さく、一眼の血流量測定は困難だが、CHA5匹(10眼)では、測定可能であった。 (3)網膜標本の作成:眼球摘出後、網膜を光学的顕微鏡で観察したが、網脈絡膜に異常を認めなかった。 3.考案: CHAの様な小動物において組織重量当り網膜血流量の比較検討するためには、正確CHAをコントロール群として、糖尿病歴、血糖値などを一定にした多数の糖尿病CHADをもちいた群の設定のもとに、放射性同位元素の測定が必要と考えられた。しかしながら、蛍光眼底撮影による網膜の血流動態を撮影記録が可能となったため、今後、長期糖尿病歴のCHADを定期的、非侵襲的に網膜症発症の有無を検討したい。
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