目的:本研究の目的は、角膜内皮細胞の増殖に角膜実質がどのように関わっているか内皮実質が相互作用をin Vitroの実験系を用いて細胞レベルから遺伝子レベルまで掘り下げて調べようとするものである。 そのためには、まず角膜内皮-細胞と実質細胞を単離して培養することが必要である。この2種類の細胞のうち、実質細胞は単独でも容易に増殖し、細胞株を作ることができた。しかし、内皮細胞の増殖は、非常に困難である。初代培養においては、家兎、ヒト共に個体差、年齢差により非常に異なり、さらに初代培養を経て2代培養以降は急速に増殖能が低下する。遺伝子レベルで調べるためには十分な量の細胞が必要であり、内皮細胞を効率よく増殖させることが優先課題と思われる。そのため、今回は内皮細胞増殖の条件を確立するため、種々の増殖因子などの効果を中心に実験を進めた。 結果:白色家兎角膜内皮細胞を用いて基本培地(Williams E)に牛胎児血清(FBS)、牛血清(CF)を加えた培地で初代培養を行った。次に実験系(2代培養)では血清中の既知、未知の因子による影響を除くため無血清培養を行い、種々の増殖因子の検索を試みた。その結果TGF-alpha、EGFは、角膜内皮細胞の増殖因子であることを見いだし報告した。また、ある種のサイトカイン(IL-1alpha、IL-1beta、IL-2)は単独では増殖促進効果を認めないが、TGF-alphaやEGFの効果を増殖することのできる増殖補助因子として働くことが解った。現在、これらの因子の他にも種々の物質を検討している(現在、HGFについて検討中)。これらの因子はほとんどが生理的な物質であり、角膜内の他の細胞(例えば実質細胞)が合成、分泌するのか、生体内の他部位からまわってくる可能性があるのか、など今後の課題である。
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