成熟ラットを材料として外側翼突筋における筋上膜、筋周膜および筋内膜について組織学的な観察を行った。 本研究に先立って、ラットの外側翼突筋が上頭と下頭によって構成されていることと、それらの起始および停止状態についてはすでに肉眼解剖的に確認している。本研究における光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡を用いた観察によって以下の結果が得られた。 筋上膜、筋周膜および筋内膜は、関節円板ならびに関節包への停止部の周囲において全般的に厚く、上頭の停止部付近ではとくに厚くなっていた。ほかの部位では、筋上膜がやや厚く、筋周膜および筋内膜は比較的薄くなっていた。また筋上膜は外側翼突筋に隣接する筋、神経等が密接している部位では厚く、脂肪組織に対向する部位や隣接する組織が離れている部位では薄い傾向がみられるなど、周囲の組織との相互関係による厚さの違いも認められた。 上頭停止部の骨表面では、骨の吸収、添加による改造が盛んに行われており、下頭停止部のうちでも関節包に近い部位には線維骨状の部位がみられた。そのほかの部位の筋付着部では起始部、停止部ともに、骨表面の改造はあまり活発に行われていないか、吸収よりも添加が優勢に行われている傾向が認められた。骨の改造領域および線維骨状領域は、筋上膜、筋周膜および筋内膜が全般に厚くなっている部位の筋付着部に相当するほか、肉眼的に筋を付着部から剥離してみると、ほかの部位に比べて固く付着していた。 これらの結果から、筋上膜、筋周膜および筋内膜の形態は、筋付着部ならびに周囲組織の形態と相関関係があるほか、骨改造部での筋の付着様式とも関連があるものと思われ、今後さらに検索を進める予定でいる。
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