研究概要 |
本年度は歯根形成初期における歯頸領域の発達と初期セメント質形成について、無血清完全合成培地による器官培養系を用い形態学的に検索を進めると共に、分子生物学的にEGFの発現に対する予備実験を行った。またそれぞれについて、in vivoとの比較を行った。 1、歯胚の培養:無血清BGJb培地で片側の下顎骨と歯小嚢を伴うマウス第一臼歯歯胚の長期間培養を試みた。培養は昨年度行った培養法の検討に基づき生後4日歯胚を8,12,14,18,20,28,35,42日間行った。 2、形態学的観察:培養12日目の歯胚の形態はin vivoで生後10日目に見られるものと同様に発達し、培養14〜18日にかけて歯頸領域に象牙質形成と、その外側にHertwig上皮鞘の断裂が観察された。また上皮鞘細胞間隙には微細なcollagen fibrilsも観察され、初期セメント質形成を思わせる像が得られた。しかし20〜42日の長期間培養を行った歯胚は、それ以上の顕著な形態的発達は見られず、またin vivoで歯根象牙質表面に見られるtoluidine blueに濃染する層は培養期間すべてにおいて確認できなかった。 3、分子生物学的手法による予備実験:分子生物学的手法に接する機会が得られたので、当初の予定を変更し予備実験を行った。すなわちin vivoとin vitro両方の系で、EGFの発現について継時的にRT-PCR(Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction)法で検討した。in vivo系は生後4、8、12日、またin vitro系は培養6、10、14、18日目の歯頸領域についてRT-PCR法に供し、双方同様にEGFの発現を確認した。このことから本実験系が初期歯根形成における観察に有用であることも裏付けられた。 今後は酵素抗体法やRT-PCR法を用いて歯根形成に関わる内因性の各種因子の発現について、また各種因子の添加による影響を検討していきたい。
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