Porphyromonas gingivalisの線毛は、口腔内定着に関与する因子と考えられているがその病原的意義については明確ではない。本研究では、P.gingivalis線毛の機能を明確にすることを目的としてATCC33277株を用いて線毛欠損株を作製し、その性状を検討することにより以下の結果を得た。 1.線毛遺伝子不活化株の作製について: P.gingivalis381株由来の線毛遺伝子fimAを含むプラスミドpUC13Bg12.1のfimA内に薬剤耐性遺伝子であるプラスミドpE5-2のEcoRIフラグメント(Tc^r/Cc^r-Em^r)を挿入して線毛遺伝子を不活化した後、大腸菌に形質転換した。形質転換株をアンピシリンとテトラサイクリン含有培地で選択した後、Em^r遺伝子を含む不活化されたfimA遺伝子を切り出し、suicide vector pGP704に挿入してpKDH1を作製した。このプラスミドが複製できる大腸菌SM10lambdapir株に形質転換後P.gingivalisATCC33277株に接合伝達を行いfimA遺伝子の相同的組み換えによる線毛遺伝子不活化株(MPG1)が作製できた。 2.性状検索について: 線毛遺伝子不活化株MPG1において、fimA遺伝子の破壊されていることがサザンハイブリダイゼーションにより確認された。また、電子顕微鏡観察において親株であるP.gingivalisATCC33277株に特有の長い線毛構造物は認められなかった。同時に、43K線毛タンパク質の消失がSDS-PAGEでも認められた。さらに、ウエスタンブロティングにおいても抗381線毛モノクローナル抗体との反応は認められなかった。これらの結果から、線毛遺伝子であるfimAの欠損株が作製されたものと考えられる。 この変異体では血球凝集能及び菌体表層の疎水性に関しては、親株と差異は認められなかったが、上皮細胞や線維芽細胞への付着に関して顕著な差異が認められた。
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