これまでに歯根膜細胞の分化機能として破骨細胞誘導抑制作用のあることを明らかにしてきた。すなわち、歯根膜由来培養細胞は末梢血リンパ球・単球からの破骨細胞様細胞の出現を抑制する液性因子を産生していることを明らかにしてきた。今年度はこの液性因子の機能を更に詳細に検討することを目的に、破骨細胞の前駆細胞を増加する因子であるとされるM-CSFおよびGM-CSFを用い、それらで刺激した末梢血リンパ球・単球(PBL)に対する歯根膜由来細胞の産生する液性因子の作用を視察し以下の結果を得た。 1.M-CSFおよびGM-CSFはPBLから出現する破骨細胞様細胞を増加させたが、ここに歯根膜細胞とPBLの混培養上清を加えると抑制傾向が現れた。 2.M-CSFおよびGM-CSFはPBLのDNA合成能を増強させたが、ここに歯根膜細胞とPBLの混培養上清を加えるとDNA合成能に抑制傾向が見られた。 3.PBLを接着性細胞と非接着性細胞に分離して、それぞれに歯根膜細胞とPBLの混培養上清を加えると、特に非接着性細胞の数を減少させた。 以上のことより歯根膜細胞の産生する液性因子はPBLのproliferationを抑える作用を有するために破骨細胞の前駆細胞の増殖が抑制されるものと考えられる。また、PBLの中でも特に非接着性細胞に増殖抑制効果を示すことは、破骨細胞の前駆細胞は、その分化の初期の段階で非接着性であるという説から考えると、この初期段階で増殖が抑制されることにより破骨細胞誘導抑制効果が発現しているものと考えられる。
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