研究概要 |
炎症歯周組織へBリンパ球が定着・集積する分子機構を解明する目的で、歯肉の主要構成細胞の1つである線維芽細胞(FB)および同細胞が産生する細胞外マトリックス(BCM)に対するBリンパ球の接着能がどのような制御を受けているのかを解析した。研究実施計画に従い、まずマウスの正常B細胞及び種々のクローン化されたBリンパ球系腫瘍細胞を指標細胞として用いた。そしてこれらの指標細胞を刺激することにより、ヒアルロン酸(HA)、フィブロネクティン(FN)およびFBに対する指標細胞の接着にいかなる影響が及ぼされるかを詳細に検討した。その結果、マウスBリンパ球系細胞をPorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)、IL-5、Lipopolysaccharide(LPS)などのBリンパ球の増殖・分化を誘導する刺激で活性化するとこれら細胞のFN及びHAに対する接着能の誘導が認められた。しかしB細胞の初期活性化のみ惹起し得るIL-4ではいずれのECMに対する接着能も誘導しなかった。このことよりB細胞の活性化段階とECMに対する接着能の問に重要な関連性が存在することが示唆された。また、細胞接着分子特異的単クローン抗体を用いた接着阻害実験より、Bリンパ球系細胞のFN,HAに対する接着はそれぞれVLA-4,CD44分子により担われていることが確認された。興味深いことに、VLA-4分子とCD44分子が同時に活性化されることはなくreciprocalにVLA-4,CD44分子が機能するよう細胞内で制御されていることが示唆された。次に、FBに対するBリンパ球の接着に関して検討を加えたところ、Bリンパ球活性化後4時間以内は主にVLA-4分子によりそれ以降はCD44分子によりBリンパ球とFBとの接着が担われていることが示唆された。また、ヒトBリンパ球も、PMA刺激によりVLA-4およびCD44分子を介してFNおよびHAに対して接着能を示し、上述の機序によりヒトBリンパ球が歯肉線維芽細胞に接着する可能性が示唆された。
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