研究概要 |
象牙質形成過程におけるストロメライシン様酵素の局在を調べるためにラットを用いて以下の実験を行った. 1.切片作製 ウイスター系雄ラット(110g〜160g)の上下顎を固定後,0.5M EDTA溶液で40日間脱灰を行った.その後,マイクロスライサ-を用い15mumの切片を作製した.これらの中で上下顎切歯の根尖部からエナメル質直下の象牙質までが含まれている切片を選択し観察対象とした. 2.免疫染色 ストロメライシンの抗体にはmouse anti rat stromelysin(transin)IgGを用い,酵素標識抗体法(間接法)を行いDAB発色により抗原抗体反応を光学顕微鏡にて観察した. 3.結果 象牙質形成期にあたる根尖部から先端部までを観察したが,抗体を用いていないコントロールに比較しストロメライシンの存在を示す様な特異的な染色はいずれの切片においても観察されなかった. 4.考察 象牙質および象牙前質にはプロテオグリカンが存在することが知られており,それらを分解する活性が象牙質中に存在することを筆者は確認している.また,培養骨細胞上清中からプロテオグリカン分解能を有するプロテアーゼを精製したといった報告もあることから象牙質中のプロテアーゼの局在をプロテオグリカン分解能を持つプロテアーゼの抗体を用い免疫的に検索することは可能であると考えられる.しかし今回,特異的な反応が認められなかった理由として象牙質中のプロテアーゼと使用した抗体との特異性が一致しなかったことが主たる原因と考えられるため,今後はプロテオグリカン分解能を有する種々のプロテアーゼの抗体を用い,局在ならびにプロテアーゼの特性を確認していく予定である.
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