研究概要 |
本年度は,義歯内部に東亜電波工業と共同して開発した金属酸化膜系のpHセンサ,送信器を組み込み,センサデータを無線方式で送信するシステムを開発した。 義歯内部に組み込んだ多チャンネルのテレメトリシステムは,以前開発した全部床義歯の咬合力や咬合接触の計測システムを応用した。これは,義歯内部に多チャンネルのセンサからのデータを合成するマルチプレクサと送信器をもち,多チャンネルのデータを単一周波数で送信する物である。システムに組み込んだセンサには新たに開発された金属酸化膜系のMETOXpHセンサを用いた。 システムを開発すると同時に我々はこのセンサを用いて歯肉溝内部のpHを測定し,pH変動の概要を観察した。また,義歯内部に電子部品を設置する場合,電子部品の性質上できるだけ温度変化の少ない部位に設置する事が望ましい。そこで,咀嚼などの機能時に義歯表面の温度変化を計測し,設置するのに適した部位を見いだした。 本年度における問題点は,連続12時間の実験を試みたところ,被験者が受信アンテナより遠ざかったり,外来ノイズの影響を受けたりした場合受信が不安定になってデータ収集が不可能になってしまい,計測ができなかったことである。pHは時系列で変化を観測しなければ意味がなく,このためには最低連続12時間の計測が必要である。 被験者を12時間という長時間にわたって拘束する事は不可能であり,また拘束する事によって唾液の性状が変化してしまう事も予想されるため,無拘束の記録システムの開発が必要になった。この記録システムは次年度に開発する予定である。
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