咀嚼筋の筋病理:顎変形症について顎矯正手術時に咬筋の生検を行い、正常者を対照として比較検討を行った。 1.正常咬筋はタイプ2の直径がタイプ1の約半分しかなく、四肢筋と全く異なっていた。これは咀嚼運動に機能的に順応したものと考えられた。 2.顎変形症ではタイプ2の選択的萎縮と比率の低下が特徴的所見であった。これは顎機能が障害されていることを意味し、とくに最大咬合力が弱いことが予想された。 3.タイプ2のgroup atrophyやsmall angulated fiberなど神経原性変化は、咀嚼筋におけるミオパチーの存在を示唆するものと考えられた。 4.これら咀嚼筋におけるミオパチーの所見は、いままでのミオパチーの分類に当てはまらないものであり、このように咬合不全を伴った咀嚼筋のミオパチーは、branchial maopathyと名付けるべき疾患であると思われた。 咀嚼筋筋電図:持続的最大かみしめにより実験的に筋疲労をおこさせ、かみしめ開始時から60秒間を12区間にわけ、EMGパワースペクトラムと筋活動量の時間的推移を表示するシステムを開発した。 5.正常者において積分値は経時的に漸減しており、筋疲労を示す所見と考えられた。顎変形症では有意に低下しており、筋病理所見と一致していた。 6.正常者では、中心周波数は経時的に低周波数域にシフトしてた。顎変形症では、経時的に増加したり、大きく低周波数域にシフトしたり異常所見が認められた。 7.本研究の筋疲労のEMGパワーペクトラム分析は顎変形症の機能的評価、診断に有用な方法であると考えられた。
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