本研究では、ウレタン・クロラローズ麻酔下のSD系ラットを脳定位固定装置に固定した後、ガラス毛細管微小電極を用いて、三叉神経系感覚入力の上位中継核の一つである視床髄板内核侵害受容ニューロンのスパイク発射活動を観察することを可能とした。ラットは、気管カニューレ挿入の後Pancuroninum投与により非動化し機械的人工呼吸を行った。今回は、視床髄板内核の外側中心核と束傍核から単一ニューロンのスパイク発射活動を細胞外電位(細胞外用高感度増幅器、専用プローブ:今回購入)として導出した。規格化した自然刺激(動脈クレンメによるピンチ、筆によるブラッシング等)を用いて、とらえた単一ニューロンの受容野を決定し、その機能的同定を行った。空気吸入時の電気刺激装置による一定刺激に対するスパイク発射を記録し、これをコントロールとした。その後、笑気吸入を開始しコントロールと同一の記録を行った。さらに、笑気吸入から再び空気吸入に戻して同様の記録を繰り返し経過を観察した。単一ニューロンのスパイク発射活動は、すべてデータレコーダーに記録した。実験終了後、イオン注入装置(今回購入)を用いて電極に通電しPontamine skyblueでマ-キングを行い、固定・保存した。後日、スパイク発射数のヒストグラムを作成し、最高発射数による比較検討を行った。また、連続凍結切片を作製し記録部位を組織学的に確認した。 Yokota および Nishikawaらのネコにおける報告と同様に、ラットにおいても両側の耳介、鼻背、口腔、上下肢先端部および体幹部の一部を受容野とする単一ニューロンのスパイク発射活動を観察することができた。本研究では、笑気吸入によりスパイク発射活動の抑制が認められたが、これは従来観察されていない新所見であり、笑気の鎮痛・鎮静作用の解明に貢献できるものと思われる。
|