材料と方法:東北大学歯学部小児歯科で管理している骨形成不全症(以後、0Iと記す)患者、女児2名いずれもSillence分類I型の永久歯交換のため脱落した乳前歯を3歯、対照としては全身疾患を有さない正常固体より得られた乳前歯を用いた。歯は半切し一方を非脱灰研磨切片、もう一方をEDTAで脱灰後パラフィン包埋し切片を作成し以下の観察を行った。1)非脱灰切片でStains-all染色液を用い、象牙質リン蛋白質を染色した。2)脱灰切片をHE染色し、象牙質の構造を観察した。3)脱灰切片をGAG(プロテオグリカン)抗体で免疫染色し象牙質含有のGAGの存在を検索した。 結果:1)正常乳歯の象牙質ではリン蛋白質に特徴的な青紫色の染色が管周象牙質に観察されたが、0I患児の乳歯では象牙質内に青紫色の染色は観察されず象牙質中にリン蛋白質が欠如していることが示唆された。 2)0I患児の象牙質において、表層から中央部まで不規則な層板構造が存在し、それに対して象牙細管は直角に走行していた。その配列は錯走し蛇行していた。また象牙質表面層近くには、エオジン好性の球状顆粒物が散在しており、発育線条はこの球状顆粒物を回避して屈曲していた。象牙質最表層は正常な構造を示していた。 3)正常乳歯の象牙質において、GAG抗体による免疫染色ではGAGの存在が観察されなっかたが、0I患児の象牙質では、GAGが一部観察された。 考察:結果1)2)についてはこれまでの報告と一致するものであった。3)で検索したGAGについては、アルシャンブルー染色やGAG抗体による免疫染色から、石灰化の初期に出現して石灰化が完了すると消失する所見が骨・軟骨で得られており、リン酸カルシウムの誘導に関わるものと想像される。従って歯についても、0Iでは石灰化が未熟なためにGAGが存在するのではないかと示唆された。
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