研究概要 |
本研究は、GTase阻害作用を有するフミン酸ナトリウム(HA)のう蝕抑制効果の有無について、SD系雄性ラットを用いてう蝕実験を行ったものである。被験飼料は基本飼料(Cont.群)としてSucrose 20%,Casein 20%,Cornstarch 44.5%,Cellulose 6%,Cotton seed oil 4%,Salt mix.4%,Vitamin mix.1.5%のう蝕誘発飼料と、これにHAを0.5%(0.5%HA群)または2.5%(2.5%HA群)となるように添加した計3種の飼料を作製して、ラットの出産と同時にそれぞれ給与した。産仔は生後14日目から4日間Streptomycin(SM)で口腔内常在菌を抑制し、引き続き4日間SM耐性S.sobrinus 6715株を口腔内に接種したのち離乳し、以後1群を10匹として48日間飼育するう蝕実験を行った結果、次のような成績を得た。 1.歯面付着菌類は、離乳後2,4,7週目にswab法でラット臼菌から採取したプラークをMitis Salivarius agarの平板上に塗抹して培養後、コロニー数を計測した。その結果、Cont.群に比べ0.5%HA群と2.5%HA群ではいずれの時期においてもコロニー数が多かった。 2.プラーク付着量は、飼育期間終了後に解離した左右上下顎を2%エリスロシンで染色し、プラーク指数を算出した。その結果、Cont.群に比べ0.5%HA群と2.5%HA群ではプラーク量が減少傾向を示した。 3.プラーク検定後の上下顎を、0.024%ムレキシド・70%エタノール溶液で染色し、Keyes法に従ってう蝕スコアーを算出した結果、Cont.群に対するう蝕抑制率は、0.5%HA群で36%、2.5%HA群では46%であり、平滑面、隣接面よりも裂溝部のう蝕抑制が著明であった。 4.HAの毒性については、飼育期間中の各群の体重曲線に差は認められず、屠殺時の血液検査結果も各群同様で、また、剖検所見においても特に認めるべき異常は無かったので、本実験条件下ではHAの毒性はないと思われた。以上より、フミン酸ナトリウムは有用なう蝕抑制物質となり得ることが示唆された。
|