beta位にキラルなスルフィニル基を有する共役ニトロアルケン類をジェノフィルとする種々の条件下でのDiels-Alder反応について詳細に検討を行なった。これにより反応の際の立体選択性ならびに不斉発現の機構に関して以下に述べるような知見を得た。 1)1-アルキルスルフィニル-2-ニトロアルケンとシクロペンタジエンのジアステレオ選択的Diels-Alder反応は、ルイス酸としてハロゲン化亜鉛を用いることにより良好な結果が得られた。特にZ体スルフィニル化合物との反応では単一の成績体のみを与え、キラルジエノフィルとしての有用性を示すことができた。 2)本系スルフィニル化合物と低反応性ジエンとのジアステレオ選択的Diels-Alder反応は、通常の条件下では進行しない。しかし高圧条件下では室温においても反応が進行し高い立体選択性で環化成績体を得ることができた。これにより種々のジエン類とのジアステレオ選択的Diels-Alder反応が可能となった。 3)一連の反応により生じる環化成績体の絶対構造を決定し、更に反応における立体選択性発現の機構を考察した。 以上、Z体のスルフィニルニトロアルケンが新しいキラルジエノフィルとして極めて有望であることを示すことができた。また本系化合物は既に、付加-脱離型置換反応による不斉ニトロオレフィン化のためのキラル反応剤として優れていることも報告されており、本化合物は幅広い用途が可能な、有機合成上重要な化合物であると結論づけられる。
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