私は、RBL-2H3細胞内には可溶性蛋白質の関与した分泌抑制機構が備わっており、IgE受容体刺激に伴いその機構が解除されなければCa^<2+>依存性の分泌が引き起こされないことを明らかにしてきた。alpha-トキシンで孔を明けた膜透過性細胞においてはIgE受容体を刺激する代わりにGTPgammaSを加えてもCa^<2+>依存性の分泌は引き起こされない。本研究ではまず、オカダ酸であらかじめ膜透過性細胞を活性化するとGTPgammaS存在下にCa^<2+>依存性の分泌が引き起こされることを初めて明らかにした。このことは、可溶性蛋白質の関与した分泌抑制機構はセリン/スレオニン脱燐酸化酵素の阻害によって抑制が解除されるような機構であることを物語っている。そこで今回は、オカダ酸で解除される分泌抑制機構とホスホリパーゼA_2との関連性について検討した。このオカダ酸であらかじめ膜透過性細胞を活性化した場合のGTPgammaSとCa^<2+>依存性の分泌はホルボールエステルの長時間処理によりプロテインキナーゼCを枯渇すると完全に阻害された。また、ホスホリパーゼA_2阻害薬はこの分泌を阻害した。これらのことは、抑制解除機構にプロテインキナーゼCの関連した燐酸化脱燐酸化の反応とホスホリパーゼA_2が重要な役割を演じていることが推察できる。別に、alpha-トキシンで膜透過性にしたRBL-2H3細胞にオカダ酸とGTPgammaS処理の代わりにホスホリパーゼA_2を処理するとCa^<2+>依存性の分泌を引き起こしたが、あらかじめプロテインキナーゼCを枯渇するとこの分泌が抑えられることを明らかにした。このことから類推すると、ホスホリパーゼA_2の下流にプロテインキナーゼCが存在する可能性が高い。そしてこのことは、ホスホリパーゼA_2を介したプロテインキナーゼCの調節機構が分泌抑制の解除機構に関わっている可能性を導くものである。
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