研究概要 |
1.PCRのkineticsを分析すると,生成物量は反応初期には指数的に増加するが,反応が進むにつれて反応速度が低下し増加が止まる。そこで片対数グラフ上で直線性を示す指数増加期の値を指数関数の回帰式に当てはめて0サイクル時に外挿すると初期鋳型量が推定できる。この原理に基づき,CCDイメージセンサーを用いた定量的RT-PCR法を開発し,ノーザンブロッティングと比較して遜色のない結果を得た。更に同方法をRIを用いて同様に行ない,RI法と非RI法に有意の差が認められないことを確認し,微量mRNAの定量が簡便かつ安全に行ない得ることを示した。また,この方法が卵細胞30個という極めてわずかなサンプルにも適用可能であることを確認した。 2.最近マウスでLIFが胎児の着床に必須であることが明らかになった。そこでヒトの子宮におけるLIFの発現およびその部位を調べるために,今回開発したKinetics分析に基づく定量的RT-PCR法とノザンブロッティング法を併用して臨床材料の検討を行なった結果,マウスと異なり増殖期の子宮内膜でもLIFの産生が認められるものの,分泌期の子宮内膜上皮細胞においてLIFの産生が亢進することが明らかになった。これはヒトの子宮におけるLIF産生を初めてかくにんしたデータである。
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