研究概要 |
天然食品添加物の生体に対する毒性学的な研究は少ない。生体異物の毒性は,生体内での諸代謝反応による活性および不活性化のバランスできまる,グルタチオン(GSH)は,異物の不活性化に関与し,その濃度は低栄養,病的状態,異物摂取などにより,低下する。急性毒性の低い合成食品添加物チアベンダゾールなどは,GSH濃度が低下した状態(涸渇状態)において,腎毒性や肝毒性を発現することが知られている。本研究では,天然物からの抽出物といる性格上,急性毒性は強くないであろうと考えられるいくつかの天然食品添加物について,GSH涸渇状態における毒性発現の有無を検討した。 まず,実験材料として,リストに収載されている約1,000品目の天然食品添加物の内,着色料7品目(赤キャベツ色素,クチナシ黄色素,コチニール色素,ビ-トレッド,ベニバナ色素,ムラサキトウモロコシ色素,ラック色素)を選択した。次に,マウスにGSH生合成の阻害剤ブチオニンスルフォキシミンを腹腔内投与しGSH涸渇状態をつくり,続いて天然食品添加物を経口投与した後肝および腎毒性を調べた。 その結果,肝毒性の指標である相対肝重量,血清GPT活性および肝中血液量は有意な増加を示さなかった。腎毒性の指標である相対肝重量,血清GPT活性および肝中血液量は有意な増加を示さなかった。腎毒性の指標である相対腎重量,血清尿素窒素も有意な増加を示さなかった。 結論として,本研究の着色料はマウスのGSH涸渇状態において毒性発現をもたらさなかった。しかし,天然食品添加物は各種成分が共存しているため,添加物によっては各種の成分含量に変動があると考えられ,有害成分が高含量のものは毒性を生じる可能性があり注意を要する。また,本研究で用いた着色料以外の天然食品添加物についても同様な検討を行う必要があると考えられる。
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