心電図の電気的収縮期(QT)の変化から、非観血的に交感神経活動を評価しようとする研究が内外で行われており、申請者はこれまでに運動中の心周期分画を測定し、全収縮期(QS_2)と拡張期(DT)の比(QS_2/DT)という新しい指標を作成し、QTと合わせてこれらが交感神経活動以外にも種々の循環系の情報を含むことを報告してきた。今回、非観血的自律神経活動の評価法としての心周分画法の妥当性を検証することを最初の課題とし、まず、先行研究において薬理的に自律神経活動を変化させたデータに基づいてQS_2/DTを推算した。その結果、それが迷走神経活動の変化と関連し、さらに、QS_2/DTとQTとQS_2の比であるQT/QS_2の変化をX-Y座標面上にプロットすることによって自律神経活動の応答をより視覚的に明瞭に評価できる可能性を見いだした。そこで、膨大なデータを連続的に分析するために、高速演算処理が可能なコンピューターシステム(ソード社、Future32alpha)を購入し、自転車エルゴメーターによる各種運動負荷時における心周期分画(QS_2/DTとQT/QS_2)の変化を連続的に測定した。その結果、短時間漱増負荷運動時いは、QT/QS_2に対しQS_2/DTはほぼ直線的に増大し、迷走神経活動及び交感神経活動がそれぞれ運動強度に応じて低下あるいは高進していることが推察された。それに対して、長時間運動中には運動強度が一定であっても、運動経過時間に応じてQT/QS_2に対しQS_2/DTは複雑に変化した。今回、アドレナリン及びノルアドレナリンの測定が出来なかったため、交感神経活動と副腎髄質の活動が評価できなかったが、今後それらを同時に測定し、自律神経活動の評価法の確立及び長時間運動中の自律神経活動を明らかにしたい。
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