ダンスのような複雑な動作を用いた健康・体力づくり運動においても、適切な運動強度の設定ができるようにするために、報告者はこれまで、エアロビックダンスプログラムの中で頻繁に実施されている16種類の基本的な下肢運動(ステップ)の酸素摂取量及び着地衝撃力を測定したほか、音楽のピッチや上肢運動の付加効果についても検討してきた。そこで、本研究はそれらのデータに基づき、強度別の運動プログラム例を作成し、それらが実際に適切な強度を提供できているかどうかを検証した。まず、基本的なステップの運動強度を安静時代謝(1MET)を基準としてランキングをしたところ、5〜9METSの範囲に分布した。そこで、その内の強度の低いステップ(およそ7METS以下)を中心とした組合せからなるプログラム(低強度プログラム(L-pro):22分)と強度の高いステップ(およそ8〜9METS程度)を中心とした組合せからなるプログラム(高強度プログラム(H-pro):29分)を作成し、エアロビックダンスの熟練者5名(平均年齢29.4歳)に実施してもらった。プログラム構成の際には、音楽のピッチや上肢運動の付加効果についての知見も考慮に入れた。そして運動中の心拍数と酸素摂取量(Vo_2)を無線式計測器を用いて測定した。その結果、L-proは平均7.8METS、エネルギー消費量は約150kcal、H-proは平均9.4METS、約232kcalで、その強度には明確な差がありながら、両プログラムとも運動時間の65%以上が呼吸循環器系の機能向上のために適当とされる運動強度(50〜85%Vo_2max)の範囲内で、しかもエアロビックダンスとして望ましい運動強度の変動パターン(釣鐘型のカーブ)を示していた。これらのことから、ダンスを応用した健康・体力づくり運動においても、客観的な基準を設けることによって、目的に応じた適切な運動強度の設定が可能になることが確かめられた。
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