組織が低酸素状態に陥ると、キサンチンオキシダーゼ(XOD)の活性化により活性酸素の生成が増大する。激しい運動中には生体内において低酸素状態が生じ、XODの活性化によるO2・が生成される。そこで本研究では、骨格筋の虚血・再灌流により、活性酸素の生成が増加するかどうかを、抗酸化物質であるビタミンEを過剰に投与したラットにおいて検討した。5週齢のSD系雄ラットを5日間予備飼育した後、2週間通常食群(C)とビタミンE(1000IU/kgdiet)食群(VitE)に分けて飼育した。実験は、疑似手術(Sham)群を加えて計3群とし、12時間以上の絶食後に行った。ラットをネンブタール麻酔下で開腹し、腹部下行大動脈の血流を阻止し、20分間の虚血後に血流を再灌流した。血流再灌流20分間後に下肢の筋肉をサンプリングした。氷冷した生理食塩水で振り洗いした後、水分をとり液体窒素に凍結保存した。大川らの方法によって筋肉のホモジネイトの過酸化脂質(MDA)を測定した。筋肉のMDAは、VitE群とSham群がC群に比べ、有意に低い値を示した。また、ビタミンEの濃度は、VitE群がC群よりも約20%程度有意に上昇した。筋肉の損傷の指標である血漿CK活性を測定したところ、VitE群が最も低い値を示した。さらに、活性酸素を発生させるFe^<2+>を2mM加え、37℃で1時間インキュベーションした結果、C群に比べVitE群が有意に低い値を示した。これらの結果から、骨格筋の虚血-再灌流は活性酸素の増加を促し、筋肉の酸化ストレスを増加させることが示唆された。また、骨格筋の虚血-再灌流による酸化ストレス、もしくは活性酸素発生物質に添加による酸化ストレスは、ビタミンE含量が高い状態で軽減することが明らかになった。さらに、ビタミンEがCKなどの血中逸脱酵素の上昇を抑える可能性も示唆された
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