本研究では、換気閾値を運動強度の指標として、運動の強度および時間変化に伴う、酸素摂取量に対する運動単位活動様式の変化を解明しようとした。いくつかの条件下で自動車エルゴメーターによる動的運動を行い、主動筋である大腿四頭筋外側の筋電図を連続的に記録し、換気閾値を強度の指標として分析した。 まず、最大までの漸増負荷運動(30W/min)中と、単発(10秒程度)の自転車駆動中の筋放電量を比較すると、換気閾値以下の低い強度では同一強度における放電量には試行間の差が見られないが、換気閾値よりも高い強度における放電量は、漸増負荷運動中の方が単発運動中よりも大きい値となった。漸増負荷運動中の酸素摂取量は強度の増加に対して直線的に増加していることから、酸素摂取量の直接的な影響ではなく、血中および筋内の乳酸、水素イオン、カリウムイオン等化学物質の時間経過と高い強度に伴う変化の影響が、動的運動中の運動単位活動様式に及ぼすことが推察された。 次に、運動開始時の酸素不足が運動単位活動様式に及ぼす影響を検討するために、50W、100W(いずれも換気閾値より低い強度)の自転車運動を負荷し、酸素摂取量と外側広筋放電量のそれぞれについて定常値との差(酸素不足量、過剰筋放電量)を比較した。運動開始時の酸素不足量が大きいほど、多量の過剰筋放電量が観察された。また、過剰筋放電量は酸素不足解消後も約1分間持続して観察され、一過性の代謝産物の影響が示唆された。 以上の研究により、同一強度での運動にも関わらず、条件によって運動単位活動様式が異なることが示唆された。酸素供給の影響と、それに伴う化学物質の変化の影響が大きいであろうと推察される。
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