ネパールヒマラヤを代表する3つの地域(マルシャンディ川流域;ランタン地域;クンブ地域)について、1970年代と1990年代に撮影された斜め航空写真を収集し、同一の氷河について年代の異なる写真を比較することにより氷河の形態変化を調べた。1970年代の写真については名古屋大学大気水圏科学研究所所有のモノクロ画像を約250枚選択し、1990年代に撮影した約500枚のカラー画像とともに、イメージスキャナーを用いてコンピューターシステムに取り込み、光磁気ディスク上に保存してデータベースを作成した。 このデータベースを用いて各氷河の二期間(約20年)にわたる形態変化を調べたところ、以下のような知見が得られた。 1.標高6000〜5000m付近に位置する小型のクリーンタイブ氷河については、クンプ地域で顕著な後退傾向がみられた。 2.岩石に被覆された大型氷河については、マルシャンディ川流域のツランギ氷河、クンブ地域のトランバウ氷河、イムジャ氷河、ロウワ-バルン氷河などで末端部の後退およびこれに伴う末端部の氷河湖の拡大が生じていることが判明した。 3.小型氷河の形態変化については、変動のスケールが100m以下と小さいため、斜め空中写真による方法では、顕著な目じるしがあるなど好条件の場合を除き、検出が難しいという結論を得た。 以上の結果を総合すると、調査を行った地域では多くの氷河が後退傾向を示し、特に大型氷河では末端の後退に伴う氷河湖の拡大が進行するという興味深い事実が判明した。
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