本研究の目的は、三角関数のグラフ概念を視覚的に獲得する探究活動支援システムを開発することである。つまり、学習者が自由にシステムを探究することにより、三角関数のグラフのメカニズムを視覚的に発見し、さらに、この視覚的イメージを公式や定理による数学的理解に結び付ける支援を行うことが本システムの開発目的である。今年度の研究計画予定は、以下の2項目であった。 (1)前年度開発した三角関数のグラフのメカニズムを視覚的に探究するツール(以下TriGraphとする)をコンピュータに接続させる。 (2)学習者の探究活動を支援する4つの機能をコンピュータ上で実現する。 今年度の研究では、上記の項目(2)の2つの機能が実現できた。一つは、TriGraphをコンピュータ上で探究するシミュレーション機能である。この機能によって、平成4年度に開発したTriGraphのハード的制約による限定された探究活動をソフト的に拡張することが可能となった。もう一つの機能は、学習者の探究活動を個人ファイルに記録する探究活動記録機能である。この機能でファイルに保存されたデータは、学習者に探究活動の助言を提供する時に探究活動助言機能によって参照される。なお、探究活動助言機能と探究仮説確認機能は現在開発中である。今年度開発した機能を三角関数グラフの導入時に授業で利用したところ、学習者は三角関数のグラフのメカニズムを視覚的に理解できたようである。 今後の研究予定は、これまで開発したTriGraphに、実世界の周期的現象の実験映像を観察する機能を追加することである。この機能を追加する目的は、学習者に三角関数の学習意欲を映像画面によって動機づけることと、三角関数が周期的現象を解明するための数学的モデルであることを視覚的に理解させることである。
|