画像のエッジ検出と領域分割(セグメンテーション)の問題に対して、統計的推定に基づくアルゴリズムを開発した。そして、計算機シミュレーションと実画像を用いた実験を行い、これらのアルゴリズムの性能評価を行った。アルゴリズム開発の手順を簡単にまとめると、以下のようになる。まず、画像のエッジや領域の連結性を統計モデルの一つであるマルコフ確率場(MRF)を用いてモデル化した。次に、最大事後確率推定に基づいて、エッジ検出と領域分割の問題をエネルギー関数を最小化する組合せ最適化問題として定式化した。この際に生じる大規模組合せ最適化問題を少ない計算量で解くため、平均場アニーリング(MFA)呼ばれる最適化法を開発した。最後に、エッジ検出と領域分割を行うために必要なMRFモデルの未知パラメータを、観測画像から自動推定する手法を開発した。この分野における従来の研究と比較して、本アルゴリズムは次の2つの点で格段に優れている。一つめは、MFAという新しい概念を導入することで、MAP推定の解が少ない計算量で求められるようになったことである。二つめは、従来の研究で人間が経験的に与えていたMRFモデルの未知パラメータを、観測画像から自動推定する手法を開発したことである。アルゴリズムの性能を評価するため、計算機で作成したモデル画像と実画像を用いた実験を行った。実験は、エッジ検出・雑音で劣化した画像の領域分割・テクスチャー(模様)を用いた領域分割の三つについて行った。その結果、対象画像が雑音・ボヤケ・陰影などを含む低画質の場合において、本アルゴリズムが各問題に対する従来のアルゴリズムと比較して優れていることが明らかになった。今後の課題としては、動きベクトルの抽出やステレオ画像の対応づけなどの他の画像処理問題への拡張と並列計算による処理の高速化があげられる。
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