研究概要 |
自然言語で書かれたソフトウェア仕様書解析のための統合環境に関する研究を行い,以下の成果を得た. 1.仕様書解析:本システムで自然言語の構文記述に用いている単一化文法の一つである語彙機能文法(LFG)について,以下の結果を得た:LFGの部分クラス,NC-LFG,DC-LFG等を導入し,これらと,有限状態変換系,並列多重文脈自由文法の生成能力の関係を明らかにした.系として,DC-LFGによって生成される言語は多項式時間構文解析可能であることを示した. 2.形式的仕様への変換:OSIセションプロトコルの自然言語仕様の主要部約100文の変換に成功した. 3.表現式構文規則の自動生成:代数的仕様は,表現式の構文を指定する文法Gと公理の集合AXの2字組(G,AX)からなるが,上記2.の変換システムは文法Gが与えられているとの前提で,自然言語仕様を公理の集合に変換するものであった.ここでは,自然言語仕様を,自然言語の構文情報をもとに解析し,表現式の構文を指定する文法Gを機械的に生成する方法を検討した.Gの簡単化にはCFGの構造的等価性に基づく簡単化法を用いている.また,適切な部分データタイプの導入や,構文規則の簡単化を,ユーザと対話的に行うシステムを開発し,OSIセションプロトコルの自然言語仕様48文について、人手で記述した文法と同一の文法を生成することができた. 4.マニュアルの自動生成:2.で得られた代数的仕様は抽象的順序機械型を呼ばれる代数的仕様に詳細化される.順序機械型仕様に基づいてコーディング,保守を行う際の日本語によるドキュメントを,順序機械型仕様から自動生成するシステムを試作した.セションプロトコルの代数的仕様を入力として自動生成を行った結果,関数名等の別名を適切に指定すれば可読性の高いドキュメントが得られることがわかった.
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