研究概要 |
概念は必ずしも同じとは限らない環境で作られており,記述の属性・属性値もいろいろな表現をしている可能性が高い。それゆえ相互理解のための共通の基盤を用意する。各属性値に対応する特徴の集まりを客観的な類似度に従って線形に並べたとき,要素が相互に入り混じっているならば、概念的に関係あるとみなす。そして,全体としては,構造間でより深い体系へと意志を伝達してゆき,ついで,逆向きにもとに体系まで概念展開・構造の修正を繰り返してゆく再帰的な相互理解方法を採用する。本計画では,色の概念形成をもとに相互理解のモデルを構築した。具体的には,Aさん,Bさんそれぞれに,あることがらについてカラーセルを選んでもらい,関係の近いもの同志をクラスタリングする。これを概念形成システムによって得られた結果(概念の示す範囲)と比較する。理解をより現実的なものとするためカラーディスプレイ上での表示を行い,概念を表す記述や名前について相互理解を行なった結果(概念の示す範囲)がどのように変化したかを表していった。この結果,他の人の持つ概念が自身の中ではどのように捉えられているか分かった。このように,相互理解の機能を明らかにすることにより,各々の構造は独自性を保ちながら二つの構造全体では緩く結合され一つになっており,結果的に,知的分業のもとで獲得された知識を一つの大きな知識として協同で利用できるようにする新しい方法論を提供できるとともに,コミュニケーションがうまく出来る程度に異なった構造によって互いの思考の豊かさを共有できるという人間の記憶のモデル化につながると考えている。
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