積雪の長時間に亘る粘性変形の解析を目的に、個別要素解析手法の開発研究を行い、以下の成果を得た。 1.個別要素で構成される粘性粒子の運動方程式をランダムな格子上の陽的差分式と見做し、その極限で与えられる連続体の運動方程式を誘導した。その結果、粒子集合体の巨視的粘性係数は、粒子間距離、巨視的密度、粒子どうしの統計的接触角分布である接触点密度関数に支配され、これらの値が変形に伴い変化するため一定とならず、一般に異方性を示すことが明らかとなった。 2.各要素間のダッシュポットの粘性係数を粒子間距離、巨視的密度および接触点密度関数の逆数に比例する形で設定して変形に対するこれらの影響を相殺し、さらにダッシュポットの粘性係数を引張と圧縮とで異なる値に設定することで、積雪に近い力学特性を有し、かつ巨視的性質が変形に依存しない集合体が構成可能であることがわかった。 3.ダッシュポットの粘性係数の設定に必要となる、接触点密度関数の各要素単位での評価方法について検討した。パーソナルコンピュータ上に装着したトランスピュータCPUにより、粘性体の一軸変形場の個別要素解析を行ない検討した結果、各要素における接触点の分布を接触要素間で平均化する操作を繰り返す方法が、接触点密度関数の一軸載荷試験を行い、雪の粘性係数の密度依存性等を調べ、その結果を反映した個別要素モデルを構成した。非一様な変形場の理論解などに対する比較解析を通し、ここに開発した個別要素解析手法が積雪の変形解析に十分適用可能であることがわかった。
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