本研究では機能性β-SiC粉末を製造する方法を通して熱電物性の向上を試みた。 1.機能性粉末合成 B添加により合成されたβ-SiCにはウイスカーが少なく、小さい粒径を持つ球状粒子が主に生成した。Nを添加した場合は、積層欠陥が多く存在し、結晶子が小さい粒子が合成された。Feを添加して合成した場合は、液相(Fe-Si系)を経由した溶解-析出反応によって欠陥が少なく、結晶子が大きいβ-SiC粒子が合成された。合成粉末のX線同定分析と格子定数の変化から、合成中に添加したBとNは各々β-SiC格子内に固溶する反面、Feは格子内に固溶せずにFe-Si系の第二相を形成したと考えられる。 2.合成粉末の熱電物性 N_2またはAr雰囲気中で合成した後、N_2中で焼結したβ-SiCはn型半導性を示した。したがって、Nは焼結中または合成中にドナーとして固溶したものと考えられる。N_2雰囲気中で合成したものの方がAr雰囲気中で合成したものより高い導電性を示したのは、合成中にNが固溶したためと考えられる。Bを添加して合成した粉末から作製した焼結体はp型半導性を示した。BはアクセプターとしてSiC中に固溶したため高い導電性が得られたと考えられる。機能性粉末から作製したβ-SiC焼結体のゼ-ベック係数を測定した場合、Nを添加したものは負のゼ-ベック係数を、Bを添加したものは正のゼ-ベック係数を示した。ゼ-ベック係数の絶対値はいずれの場合も温度上昇と共に増加した。Feを添加した場合の導電率とゼ-ベック係数はBまたはNを添加したものより両方高い値を示した。導電率の増加はβ-SiC内に金属系のFe-Siが形成されているためであり、ゼ-ベック係数の増加は欠陥が少ない粉末の生成のためと考えられる。Fe-Si系の熱処理によって金属相の半導体化することによってもっと優秀な熱電物性が期待される。
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