100mK程度の極低温において、格子比熱が支配的である絶縁体の熱は温度の3乗に比例して小さくなるので、低エネルギーの粒子線が入射した場合、エネルギー付与に応じた温度上昇の観測が可能になる。また、極低温においてある種類の強誘導体の誘電率は温度に対して強い依存性を示す。したがって、極低温においてある種類の強誘電体の誘電率は温度に対して強い依存性を示す。したがって、極低温に冷却された強誘電体にX線等の粒子線を入射した際に生じる誘電率変化を計測することにより、試料に付与されたエネルギーの大きさを評価することが可能であるので、適当な強誘電体試料を用いると、入射X線のエネルギーを高井分解能で検出することが期待できる。そこで本研究では、強誘電体を使用した極低温高分解能線検出器の特性を詳細に評価した。まず、極低温に冷却された強誘電体にエネルギーが付与された際の検出信号と熱雑音との関係を統計熱力学的に導出した。また、接合型電界効果トランジスタ(JFET)を電化感応型前置増幅器として用いる場合について、JFETの雑音特性を考慮したX線検出器の出力信号解析モデルを考案した。次に、文献等により本研究の目的に適する試料の検討を行った。その結果、95%SrTiO_3-5%SrTa_2O_6試料は、100mK程度の極低温において、誘電率の温度依存性(1/epsilon)(depsilon/dT)が1.21と大きく、本研究のX線検出器の素子として適していた。検出器の性能を決定する試料の極低温における誘電率、比熱及び熱伝導率等の物性値及びそれらの温度依存性を調査した。得られた物性値を用いて、2mm×2mm×0.1mmの大きさの95%SrTiO_3-5%SrTa_2O_6試料を100mKに冷却して5.9keVのエネルギーのX線検出器として使用する場合の特性を評価した。このとき前置増幅器からの出力心房はCR-(RC)^4の波形整形回路により整形されるとした。その結果、検出器の熱伝達と熱容量との比で決まる時定数及び整形回路の時定数を最適化すると5.9keVのX線が1eV以下の分解能で検出可能であることを示した。
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