アモルファス金属を適当な条件で燃鈍すると、その内部に結晶粒が生成される。本研究は、アモルファス金属のこの様な性質を利用して、イオンビーム照射により材料表面に観察される特徴的な表面形状生成に必要な物質の大きさを測定することを目的とした。結晶粒は、アモルファス相よりもスパッタリング収量が大きく、結晶粒を中心としてイオンビーム照射による表面形状生成が観察される。試料には、Fe_<78>B_<13>Si_9の厚さ25mumのアモルファス金属箔を用いた。本材料に485〜505℃の5℃おきに核時間燃鈍、500℃で2時間及び5時間の燃鈍を施した試料を準備し、20keV Arイオンを2×10_<19>(ions/cm^2)照射後、表面形状をSEMにより観察した。SEM像に、フーリエ変換等の画像処理を施し特徴描出を行った。同時に、同様の試料に対して、TEM観察を実施しアモルファス金属内の結晶粒の生成の確認を行った。また、結晶粒の粒径及び生成密度を決定するために各試料に対して、生成された結晶粒の一層程度がエッチングされる量のArイオン照射(約3.5×10^<17>ions/cm^2)を実施し、浸食面に形成された結晶粒によるエッチピットの形状及び密度を測定した。エッチピットの形状は、TEMにより観察した結晶粒の形状と一致していた。以上の結果よりアモルファス金属に生成する結晶粒の粒径及び密度と燃鈍条件の関係が明確になり、粒径の分布を確認する事が出来た。また、きわめて小さな結晶粒でもエッチピットの生成が観察され、そのため、表面形状生成の閾的な結晶粒の大きさについては、厳密な決定は困難であったが、結晶粒径分布及び密度とイオンビーム照射による表面形状変化の関係を明確にすることが出来た。以上、本研究で得られた成果は、日本原子力学会「1993年秋の大会」において既に一部発表済みであり後日、論文発表を予定している。
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